閃光の空へ
今は2128年人間は重力から解き放たれ、宇宙へと進出した。
星間ラムジェット航行により、高速の60%まで出すことが可能となった。
これに伴い、外宇宙へと進出をはじめた。
そこには、文字通りの『敵』がいた。
人間はその『敵』を歴史に破壊する者『ブレイカー』と総称した。
ブレイカーには様々な種類がいた。
ブレイカーは一種の生命体であり、単体で大気圏の突入や離脱ができる強靭な者だった。
人は彼らを見たときに恐れ、彼らを駆逐しようとした。
彼らは知性的なもので、こちらが新たな武器を作ればそれに対抗する個体を作った。
今では、彼らの個体は十数種類にも及ぶようになってしまった。
俺は自衛軍の空のエースパイロットだ。
俺の駆る機体は、伝説の名機と呼ばれた機体『VW501』の改良型だ。
尾翼に女騎士の横顔がペイントされており、VW501改『イザベル・フランドール』と言うコードネームがついている。
特殊兵装としてビットのような兵器がついている。
これは、今の主流の機体にもつけようとする計画があったが、相性が悪く、搭載できないのだ。
このビットの正式名称を『遠隔操作式攻防両用型特殊兵装28式α』といい。
俺はこの兵器を『ストームブリンガー』と呼んでいる。
この兵器にはいくつもの使い方があり、まずひとつはストームブリンガーとイザベル・フランドールの間に一次元の刃を作る物だ。
これは主に接近戦として使い、次にストームブリンガーを三つ以上使い、力場を作りだしてシールドにする使いかただ。
この二つが主なつかい方である。
この機体と兵器のおかげでエースになれたといっても過言ではなかった。
ある日のことだった。
その日俺は非番で休みだった。
だが、ブレイカーたちはそんなものはお構いなしに襲ってくる。
ビービービー
けたたましく鳴る警告音。
聞きなれた音だった。
襲来した合図。またきたのだ。俺達の文明を潰しに。
そして例のごとく俺は非番にもかかわらず、身支度を簡単に済まし家をでる。
軍基地に向かう。
そこには、予想どうりといった顔で俺を待っている専属のメカニックとオペレーターがいた。
「またきたのか?」
俺は分かっているのだが、ため息混じりに聞いてみる。
「ええ、今回は駆逐艦タイプ10に尖兵タイプが50に未確認タイプが1よ。ブレイカーさんもやっと本腰を入れてきたって感じね」
オペレーターの女性は軽い感じで言う。
「へぇ、未確認タイプか。8年ぶりだな」
「そうね、あなたは入隊したてにもかかわらず未確認タイプを落としたんだっけ?」
「・・・そんなこともあったな」
これは、輝かしい成績だが、俺はあまり喜べないことだった。
なぜなら、そのとき未確認タイプの攻撃から俺を守ってくれたのは、当時のエースパイロットだったからだ。
俺は、自分のせいでエースを死なせたことを悔やみ、毎日のように戦闘訓練に明け暮れた。
その甲斐あって、今ではエースパイロットになっている。
「よし、いつでもいけるぞ」
メカニックが最終チェックを済ませて俺に伝える。
「今回は、ストームブリンガーの8番機は使えないからな、気をつけろよ」
「わかった」
できるだけ冷静を装って言う。
内心は冷や汗物だ。未確認タイプがいるのにストームブリンガーか1機でも使えないのはつらい
だが、俺はエースだからみんなに心配をかけるわけには行かないのだ。
「じゃぁ、いってくる。ひとつ小隊を俺の指揮に入るように通達しておいてくれ。頼んだ。」
「OK。お前の指揮下ならどの小隊も入りたがるさ。なんたってお前の指揮に入った小隊は生還率90%だからな」
普通の小隊の生還率は多く見積もって65%だから、生還率90%はまず死なないと考えていいのだ。
「おいおい、だからって、みんなまとめて一つの小隊とか言って俺の指揮下に入れるなよ」
1年程前に3つの小隊を指揮下に入れられ、危うく撃墜されそうになったときの苦い記憶がよみがえる。
「ハハハ、分かってるさ。こっちだってお前に死なれたらオマンマ食い上げだからな」
「了解」
ービッー
オペレーターが連絡を切る。
「現在、第24小隊が、隊長機を撃墜され、指揮官がいません。ですから、そこの指揮をお願いします」
ひとつの小隊は隊長を入れて7機構成でできている。
「わかった。24小隊だな。」
俺は確認しつつ機体に乗り込む。
――カシュ――
コクピットが閉まる。
計器をチェックする。そして、翼とジェット噴射口の稼動を確認する。
今日は、8番機の故障意外すこぶる快調らしい。
「カタパルト接続完了、気をつけてね。イザベル・フランドールどうぞ」
俺達の機体は、長距離航行を目的としていないため、燃料の減りが早いのだ。
しかも、撃墜されたとき地上の汚染が心配なので、核や反物質といった危険な物は使えない。
そのため、燃料電池と太陽光を逐電して使うしかないのだ。
「了解。イザベル・フランドール出るぞ!」
ゴーーー
ジェットコースターのように旋回させられ、線路の切れ目に向かって飛ばされていく。
大型のリニアレールガンを改造して作ったカタパルトだ。
一気に加速する。
―ドンッ―
音速を超えているので、音と衝撃波が後に残る。
「イザベル・フランドールより、24小隊へ。これより貴公らは俺の指揮下に入る。補佐を頼むぞ」
『了解』
生き残っているメンバーの中で、仮の指揮官を務めていたらしき恰幅の良い男が話し掛けてくる。
「一時はどうなることかと思いました。でもこれで安心です。伝説の名機と一緒なら生きて帰れそうです」
「敵の中には未確認タイプがいる。あまり楽観視するな」
俺は厳しい口調で叱咤する。
「すっ、すいません」
男はでかい体を縮こませて謝る。
「分かれば良い。他の奴らも油断はするなよ。用心はしすぎて越したことはない」
『了解』
全員が短く返事をする。
「よし。今から俺達は未確認タイプとの先頭を最優先事項として行動する。陣形は俺を先頭とした紡錘型で行く」
ーゴクッ
回線からつばを飲み込む音が聞こえる。
まぁ、そうだろう。未確認タイプとの戦闘である。下手をすれば全滅である。
「返事をしろ!」
気負いを減らすために叱咤する。
『了解!』
皆が、思い出したように勢いよく返事をする。
だが、硬すぎた。これでは敵の攻撃に対して柔軟に反応できない。
「大丈夫だ。俺は軍のお偉いさんのようなことは言わない。情報は二の次で良い。とにかく生き延びろ。以上だ」
『了解!!』
皆の気負いが少し減ったようだ。
かといって何とかなるというわけではない。
何しろ今回の敵は未確認タイプなのである。どんな攻撃をしてくるかも分からない。
そんな相手に俺はまた勝てるのだろうか。
また誰かを犠牲にするのだろうか。
いけない。こんなことを考えていては、勝機を見失う。集中しなければ。
「未確認タイプと接触まで、あと1500m上昇してください」
オペレーターの声が響く。
「ちっ、尖兵タイプの数が多い。他の隊は何をやってるんだ!?」
「駆逐艦タイプに手間取っているようです。どうします?援護に向かいますか?」
「そうだな・・・。いや、やめておこう。今が未確認タイプをたたく千載一遇のチャンスだろうから」
そうだ、尖兵タイプが邪魔だとはいえ、あと1500mならチャンスだろう。
「第24小隊!前方の尖兵タイプ10体を速攻で殲滅する。行くぞ!突貫!!」
『了解!!』
「1〜8番までのミサイル一斉射撃」
俺は、イザベル・フランドールにつんであるミサイルを一気に放つ。
通常の機体はミサイルを20番近くまで持っている。
だが、俺の機体はストームブリンガーをつむために場所をとりすぎて、8番までしかつめないのだ。
他の機体と比べると情けない物があった。
「尖兵タイプ、1体ミサイル郡を抜けました。陣形の左翼側に特攻してきます。」
オペレーターの緊迫した声が聞こえる。
「うわぁー!」
恐怖に震える声が聞こえる。
左翼側の尖兵タイプの直撃ルートにいる奴の声だ。
「ちっ、しょうがねぇ。ストームブリンガー1〜4番まで発射。続いて紡錘形のシールドを展開」
俺の声と、操作によりストームブリンガーが発射される。
そして、叫んでいた奴の機体の周りにシールドを展開する。
尖兵タイプは紡錘形のシールドのせいで、バラバラなる。
「あっ、ありがとうございます」
助けられた礼を言ってくる。
礼を言うのは大切だが、つい口が滑ってしまう。
「礼を言う暇があったら、あのくらい自分で何とかしろ!」
ついつい叱咤してしまう、
「すいませんでしたっ!」
「たッ、隊長!未確認タイプがきます!!」
すぐにディスプレイに目を戻す。
でかい。今までのどのブレイカーよりでかいタイプだ。
形はたとえるなら。地獄の番犬ケルベロスだった。
三つの頭が口をあける
口から衝撃波がほとばしる。
幸い直撃を受けた者がいなかったが、衝撃波は俺の機体の直撃ルートだった。
俺は紙一重でかわし、俺の後ろにいた2機は損傷こそないが、コントロールを奪われ離脱する。
「24小隊。α1、α4共に離脱。α6の軌道が少しずれています。」
オペレーターが正確に情報を伝える。
「α1、α4は戦線復帰可能なら他の小隊に合流しろ。α6はそのままの軌道で敵の背後をとれ。」
α6は幸いというか何と言うか、背後をとりやすい軌道にいた。
そして、もう一度ケルベロスが口をあける。
「やばい。24小隊。展開しろ!」
俺の指示どうり小隊がバラバラの方向へ移動し始める。
俺は一人だけ敵に向かって突っ込んでいく。
「1番から3番までストームブリンガー射出。イザベル・フランドールの前面に三角形のシールドを展開」
機体の全面にシールドを張ながら突撃する。
――ドンッ――
衝撃波がシールドに直撃する。
その衝撃でストームブリンガーがはじけ飛ぶ。
――ボンッ、ボンッ、ボンッ――
「こちらα6敵の背後を取りました」
「よし!そのまま全弾発射しながら離脱。基地へ戻れ」
「了解」
――ドォーン――
爆音がとどろき、ミサイルの爆発が空を彩る。
ケルベロスの頭が吹き飛ぶ。
「よくやった、後は俺に任せろ」
俺は小隊のことをまったく忘れて突貫する。
「ストームブリンガー4番から7番射出。紡錘形にシールドを張り、敵をぶった切る」
そのときだった、ケルベロスの残った二つの目から光線がほとばしる。
俺はそれをシールドを犠牲にしつつかわす。
それにより、4番機が破損し、三角形のシールドになってしまう。
俺は急いで代わりを出す。
「ストームブリンガー8番射出・・・。もとい、9番射出だ」
危うく使用不可の8番機を射出しそうになる。
その一瞬の遅れが問題だった。
ケルベロスの口から再び衝撃波が走る。
俺はもちろんん今展開している三角形のシールドで防ごうと試みる。
――ボンッ――
至近距離であたったため、3つのストームブリンガーが一気に吹っ飛ぶ。
俺は最大出力で、衝撃波の穴に突っ込む。
主翼が少し削れたが、ケルベロスの鼻先に出現することができた。
「10番から12番まで射出。9番と合流しつつ、もう一度紡錘形にシールドを展開。切り裂く!」
――ドスッ――
――ブチャ――
敵の頭から首にかけ手を切り落とす。
だが、ケルベロスの尾が飛んでくる。巨大な質量兵器となっている尾はストームブリンガーを壊すのには十分な物だった。
――ドンッ――
――バキンッ――
尾翼が折れる。
満身創痍といった感じだった。
尾翼は折れ、武器もなくなっていた。
だが俺はこんなところで死ぬわけには行かなかった。
俺は、できるだけシステムを肩代わりできるように設定しなおし。
尾翼の折れたことも考慮するようにプログラムをいじる。
すると、見慣れないシステムを見つける。
「スターシャイナー?なんだこれ?」
「おいこら!スターシャイナーはいじるなよ。まだ完成してないんだ」
「・・・撃てるのか?」
「一応な、って撃つなよ。暴発するかもしれない」
俺はそこまで聞いたら通信を切る。
こいつを使えば何とかなるかもしれない。
とにかく、スターシャイナーの起動シークエンスに入る。
どうやらスターシャイナーというのは、一回ぽっきりの爆祝砲であることが分かった。
使い捨てらしい。
俺は、暴発してもいいと思いつつ、トリガーに指をかけた。
敵の攻撃をかいくぐりながら接近する。
そして、故障中の8番機をおとりにして、ゼロ距離と呼べるほど近付く事に成功した。
過去の記憶がよみがえる。
この機体にはじめて乗ったときのことだった。
「イザベル・フランドールごめんな」
機体に謝りつつ。覚悟を決め叫ぶ。
「スターシャイナー発射!!」
閃光で、目の前が真っ白になる。
無音で、何も見えない空間が広がった。
俺は、ケルベロスを倒し人類に希望を持たせることに成功した。
今俺は病院のベッドの上にいる。
あの光のせいで目がやられてしまった。
失明している。バイオ手術で処置を施している。
もう3、4ヶ月もすれば直る予定だ。
そうしたら、俺はまた向かうだろう。
―――閃光の空へ
完
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた次回作でお会いしましょう(あればですが)。