最終話 佐藤敏男と勘違い男
俺の名前は佐藤敏男。
現在業界随一の探偵だ。
俺の担当した調査などは100%成功している。
今日も困った子猫ちゃんが俺の事務所に来ている。
といっても、依頼人のことを子猫ちゃんと言ったわけではなく、本当に子猫がいるのだ。
首輪をしていることから、飼い猫ではないかと思ったのだが、子猫の捜索願は出ていない。
こんな所で考えていても始まらないので、俺は新聞を読むことにする。
この頃は、物騒な事件が続いている。
やれ、バラバラ殺人だとか、やれ、猟奇殺人だとか、やれ、MSの市街地戦闘などが続いている。
まぁ、最後のあたりは違う気がするが・・・。
なんにしても、個人的には華のある事件を解決したいのだ。
例えば、金田一少年のような解決だ。
そんなことは無理だと思いながら、想像に浸っていたそのとき、事務所のドアが開いた。
「こんにちは」
おばさんだった。いかにも中流家庭の主婦ですといった感じの、中年女性が立っていた。
俺は乗り気にならない心を隠しながら、用件を聞く。
「どうしました?」
女性は答えた。
「家の猫がいなくなったんです」
めんどくさいなと思いつつ、俺は特徴を聞く。
「どんな猫なんです?」
女が写真を出す。
その写真の猫は、間違いなく俺の拾ってきた猫だった。
俺は恐る恐るといった感じで、猫を見せる。
「・・・この猫ですか?」
主婦は、目をしばたたき、猫を凝視する。
「はっ、はい。この猫です。でも・・・どうして」
俺は、この猫を手に入れた理由を話した。
「・・・そうだったんですか。ありがとうございます。これ、報酬です」
・・・まただった。
また、あの無料券を手に入れてしまった。
喫茶“グリモワール”だ。
俺は、この頃自腹でちょくちょく行っていた。
そのときは、砂糖と塩を間違えることなく、砂糖と塩の混じった物を使うことも無く。
美味しいコーヒーを飲めた。
二度あることは三度ある。また、何かトラブルがあるのではないか。
俺は佐藤敏男だから。
だが、三度目の正直ということもある。
俺は、苦悩の末ブラックにすることにした。
そして、喫茶“グリモワール”へ向かう。
今日は店先に人形の首吊りが果物のようになっている。
なぜ、この店は俺が無料券を手に入れると何かが店先にぶら下がっているのだろうか?
不吉だ。
何かぶら下がっていると良くないことが起こる。
運を天に任せ、俺は店に入る。
やはり、座るはカウンター席だ。
自称ハードボイルドとしては、そこははずせない。
「やぁ、佐藤さん。今日はミルクでも入れてみないかい?」
微妙に眠そうな声でマスターが聞いてくる。
「いや、今日は何も入れなくていいよ」
俺は、やはりジンクスが怖く、今日はブラックにする。
そして、読みかけの新聞に目を通す。
「お待ち」
マスターの簡素な言葉とともにカップが出てくる。
「ありがとう」
俺は新聞を読みながら、カップを手に取り飲む。
・・・おかしい
俺はもう一口飲んでみる。
・・・やはりおかしい
味がしないのだ。強いていえばカルキの味のみ。
本当に何も入れなかったのだろう。
重湯だった。もはや、コーヒーとはいえなかった。
俺の名は佐藤敏男。
この日もまた憂鬱といった感じで帰路につく。
最終話 完
このシリーズはこれで終わりです。
最終話は砂糖と塩と関係ないです。
ネタ切れとかじゃなくて、これも知り合いの話を使ってますので。