内なる力との付き合い方
いつも通りの日常。
朝起きて、飯を喰らい、身支度を整え、学校へ行き、家に帰り、飯を喰らい、眠る。
くだらない日常。
親にヘコヘコし、教師に頭を下げ、先輩に従う。
壊したくてたまらない日常。
それは小学生のときだった。
車に惹かれそうになった俺は、何も考えられずとにかく飛んだ。
そして目覚めた。ちょっと特殊な力。体の限界を引き出す力。
その力は微々たる物だった。だが、肉体の限界を引き出すその力は、年をおうごとに大きく強くなっていった。
当然だ。肉体の限界が上がったから。
だが、当然体への負担は大きい。限界を出し続ければ体は滅びる。
小学生の時に一度だけためした。
同級生との喧嘩で力を使った。
結果は火を見るより明らかだった。
小学生のレベルを超えた力を出せる俺の圧勝だった。
だが、その分反動も大きく、筋肉が切れて失神してしまった。
次の日からしばらくは筋肉痛で起きるのもつらい状態だった。
そのことを叔父貴に話すと、その力は使ってはならない。使うべきではないと止められた。
その代わり、叔父貴は俺に戦い方を教えてくれた。
喧嘩の仕方、トラップの作り方、サバイバルの仕方。
小学生の俺は土が水を吸うように、叔父貴の技術を覚えていった。
そして、俺は小学校では一番強い男になってしまっていた。
中学、高校と俺は本性をできるだけ隠した。
隠すのは簡単だった。中学に入る直前に叔父貴の家のほうへ引越し、小学校の連中とは違う学校へ進んだ。
そして、そこそこの高校へ進んだ。
そうだ、小学校を卒業してから俺の平凡な、退屈で、つまらない日常が始まった。
高校に入ってしばらくしたとき、叔父貴は死んだ。
強い人だったのに、トラックの事故に巻き込まれてほぼ即死だったらしい。
俺はその日以来、やる気をなくした。すべてにおいてのやる気を。
目標である叔父貴がいなくなったからだ。
そして、だらだらと日々を送っていた。
そんなある日のことだった。
全校集会。ここ最近変わった事件が起こっているからだ。
事件の大体のあらましはこうだ。
学校帰りに生徒が行方不明になったり、脳味噌のない、無残な姿で帰ってくるかだ。
警察は、異常殺人犯として捜索し、学校には集団下校を徹底するようにと連絡があったそうだ。
だが、そんな警察の努力も空しく、つい先日5,6人のグループが襲われ、無残な姿になっていたそうだ。
これにより、女子生徒の間では、怪物の仕業だなんて噂が出ている。
それにしてもおかしな事件だと思った。
犯人は脳味噌以外には興味を持っていないのだった。
猟奇殺人犯のほとんどが、歪んだ性欲のために人を殺しているというのに。
犯人は、脳味噌しか狙っていない。非常に不可解なものだった。
そんなことを考えながら、俺は眠りに落ちた。
夢を見た。
久しぶりのことだった。
夢には叔父貴がでてきて、俺にこういった。
どんな小さな事象でも万に一つでも確立がある限り、目を瞑るべきではない。
昔からの、小さい頃からいわれ続けた言葉。
叔父貴が、最初から最後まで徹底して教え込んだ言葉。
油断するな。容赦するな。
どんな小さな戦いであれ、処女を扱うように丁寧に繊細に扱え。
叔父貴の口癖だ。
―――――ドンッ―――――
何かが破裂したような音がする。
その音とともに俺は目を覚ました。
わけがわからなかった。俺は困惑してフェンスから身を乗り出し下を見てみる。
すると、体育館から煙が上がっていた。
キナ臭いことになりそうだ。
とにかく落ち着かなければ。
そう思い脈を計る。人間は心音を聞くと落ち着くらしい。
俺は結構動揺しているらしい。
どうする?警察に連絡か?
それとも、面倒くさいし、一人で逃げるか?
・・・俺は叔父貴の教えを全く守れずにいた。
こういうときこそ冷静に、情報を手に入れるべきであった。
俺は深呼吸をし、心を落ち着け屋上から降りるべく扉を開けた。
そのときには昔の、腑抜ける前の顔に戻っていた。
続く